AからZまでの二六の変数を使ったこの素数公式がついに見つかったのは、一九七六年のことだった。
(K+2){1-[WZ+H+J-Q]2-[(GK+2G+K+1)(H+J)+H-Z]2 -[2N+P+Q+Z-E]2-[16(K+1)3(K+2)(N+1)2+1-F2]2 -[E3(E+2)(A+1)2+1-O2]2-[(A2-1)Y2+1-X2]2 -[16R2Y4(A2-1)+1-U2]2-[((A+U2(U2-A))2-1)×(N+4DY)2+1-(X+CU)2]2 -[N+L+V-Y]2-[(A2-1)L2+1-M2]2-[AI+K+1-L-I]2 -[P+L(A-N-1)+B(2AN+2A-N2-2N-2)-M]2 -[Q+Y(A-P-1)+S(2AP+2A-P2-2P-2)-X]2 -[Z+PL(A-P)+T(2AP-P2-1)-PM]2}
この公式は、コンビュータプログラムのような働きをする。AからZまでの文字に、たとえばA=1、B=2、……、Z=26というふうにでたらめな数を当てはめ、公式に則って計算を行う。得られた答えがゼロより大きければ、それは素数である。(中略)
ついに、長いあいだ探し求めていた聖杯が見つかった!のではないのか?なにしろ、この異様な多項式を使えば、あらゆる素数が得られるというのだから。たしかに、この方程式がオイラーの時代に見つかっていたら、大ニュースになったはずだ。オイラーは、相当数の素数を作り出す方程式を見つけたものの、あらゆる素数を作り出す方程式は見つけられそうにないと思っていた。だが、オイラー以降時代は変わり、数学者はリーマンの精神を尊重するようになった。単に方程式や公式を研究するのではなく、その下に潜む構造や数学世界を流れるテーマを研究することが重要だと考えるようになったのだ。数学世界を探検する人々は、今や新しい世界への通路を地図にするのに大忙しで、この素数方程式の発見は、時代錯誤な出来事だった。新しい世代の数学者から見れば、かつて探検されてすでに顧みられなくなった土地の非常に技巧的な調査結果でしかないのである。確かにこのような方程式の存在は驚くべきものだ。しかし、素数の研究そのものは、リーマンの手によって別のレベルに移っていた。ショスタコービッチの前衛的な音楽が登場した後でいくらモーツァルトのような古典派の交響曲を作曲し演奏しても、たとえそれが完ぺきな作品であろうと、聴衆にそれほどの感銘を与えることはできないのだ。(素数の音楽 / マーカス・デュ・ソートイ、p.300-301)